遠心力は重力です

Einsteinの一般相対性理論では,「慣性力と重力は区別できない」という事を要請します.つまり,ざっくり言えば,我々の知っている重力とは,実は時空が曲がっていることに由来する慣性力だったということです.逆に言うと慣性力は重力なので,一般相対性理論での重力を求める手続きで慣性力を求めることができます.

一般相対性理論での自由粒子運動方程式(測地線方程式)は,

 \displaystyle\frac{d^2x^\alpha}{d\tau^2}+{\Gamma^\alpha}_{\mu\nu}\frac{dx^\mu}{d\tau}\frac{dx^\nu}{d\tau}=0

です.第二項が重力,つまり慣性力の効果です.計量テンソル

\displaystyle{\Gamma^\alpha}_{\beta\gamma}=\frac{1}{2}g^{\alpha\mu}\Bigl(g_{\mu\beta,\gamma}+g_{\mu\gamma,\beta}-g_{\beta\gamma,\mu}\Bigr)

と書けるのが接続係数{\Gamma^\alpha}_{\beta\gamma}です.カンマは偏微分です.接続係数はテンソルではないことに注意です.

ysdphy.hatenablog.com

 で扱ったように,二次元極座標を考えます.測地線方程式を求めて遠心力とコリオリ力が出れば成功です.

まず

\displaystyle (g_{ij})=\text{diag}(1,\,r^2),\,(g^{ij})=\text{diag}\left(1,\,\frac{1}{r^2}\right)\quad\text{for}\quad i,j=r,\theta

なので接続係数の式の右辺に掛かる計量テンソル逆行列の因子はg^{rr}g^{\theta\theta}しか生き残りません.

よってまずg^{rr}を考えると

\displaystyle {\Gamma^r}_{\beta\gamma}=\frac{1}{2}g^{rr}\Bigl(g_{r\beta,\gamma}+g_{r\gamma,\beta}-g_{\beta\gamma,r}\Bigr)

ですがg_{rr,r}=g_{rr,\theta}=0より生き残るのは第三項でg_{\theta\theta,r}となるときだけで

\displaystyle {\Gamma^r}_{\theta\theta}=\frac{1}{2}g^{rr}(-g_{\theta\theta})=-r

つぎにg^{\theta\theta}を考えて

\displaystyle {\Gamma^\theta}_{\beta\gamma}=\frac{1}{2}g^{\theta\theta}\Bigl(g_{\theta\beta,\gamma}+g_{\theta\gamma,\beta}-g_{\beta\gamma,\theta}\Bigr)

ですが,先ほどと同様に生き残るのはg_{\theta\theta,r}ができるときだけです.しかし今回は第一項,第二項でこれができるので

\displaystyle {\Gamma^\theta}_{\theta r}=\frac{1}{2}g^{\theta\theta}g_{\theta\theta,r}=\frac{1}{r}

\displaystyle {\Gamma^\theta}_{r \theta}=\frac{1}{2}g^{\theta\theta}g_{\theta\theta,r}=\frac{1}{r}

となります.よって測地線方程式は

\displaystyle \ddot{r}+{\Gamma^r}_{\theta\theta}\dot{\theta}^2=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2=0

\displaystyle \ddot{\theta}+{\Gamma^\theta}_{r\theta}\dot{r}\dot{\theta}+{\Gamma^\theta}_{\theta r}\dot{r}\dot{\theta}=\ddot{\theta}+\frac{2\dot{r}\dot{\theta}}{r}=0

です.上では四次元時空を考えていたので\tauの二階微分で測地線方程式を書きましたが今は二次元でtは座標ではなくスカラーなのでこれの二階微分で測地線方程式を記述できます.

このように一般相対性理論で遠心力とコリオリ力を導出出来ました.

 

注意:どこかで計算ミスをして,間違った結論になっているかもしれません..