掛け算に順序があるという錯覚と音声言語

掛け算順序問題が話題です.もしかしたら話題というのは勘違いでずっと前からある問題なのかもしれませんが.順序固定指導をする教員の中にも様々いてその中で

 (\text{1つ分の数})\times(\text{いくつ分})

と書くのが「正しい」と考え,指導し,これと逆順で書くのは不正解とする指導があるそうです.これをどちらで書くのかは全く恣意的なので可笑しな考えなのは間違いないでしょう.これ以上の深入りはここでは避けます.

さて,このような誤解はある意味「錯覚」と呼べるのではないでしょうか?考えてみれば,数式や文には非常に強い制約があります.それは1次元であるということです.文字言語にこのような制約が設けられるのは,自然言語が全て音声言語に由来するからと考えれば納得がゆきます.音声は,空気中を伝わる振動なので,初めから終わりまで順を追って情報が展開されます.従って,文字言語は左から右へ(アラビア語などでは逆)順に理解されます.プログラミング言語はこの限りではなく,while文やfor文のようなものが存在しますが,アルファベットをPCで打ち込むので基本的には1次元です.そしてこの音声に由来する性質は数式にも受け継がれています.数式には左から右に読まなければならないという制約はありませんが,1次元です(行列はどうなんだとか色々ありますがここではよいでしょう).

ではこの錯覚から解放されるのはどうすればよいか?順序というものが生じる記法をやめてしまうのです.つまり,思い切ってダイアグラムで書いてしまいます.2×3は

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2×3

これは

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2×3

こうしてもよいので,当然

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2×3

です.

上記の話は半分冗談ですが,うまい記法を考えるというのは結構大事ですよね.では足し算はどう表すんだとか色々疑問がわいてきますが,思いつきで書いただけなので,そこまでしっかり考えていません.天才ファインマンは場の量子論の摂動計算をダイアグラムを考案することで大幅に効率化したのですが凡才の私ではこれが精一杯です.四則演算のダイアグラムってあるんでしょうか.まあ,面積で表すのが一番良いんでしょうけど.というか面積の概念はあるのに順序に拘る人って一体...