物理学科的な漸化式の解説(いわゆる「特性方程式」の意味)
高校生向け記事です.等比数列や数列の表し方(一般項)は知っている前提としていますが漸化式についての知識は一切仮定していません.初めから理解してが解けるようになることを目標としたいと思います.
漸化式は解法暗記ゲーのように思われがちですが,一貫して重要な考え方があります.それは「重ね合わせ」です.数Bのベクトルで「一時独立」,数列の和で「差分」がキーだったのと同様です.
漸化式とは,例えば
のように数列の前後の関係を決める式です.この場合,一つ後ろの項が3倍になっているような数列です.このような数列は
や
などがあります.このように,漸化式は前後関係を規定しているだけなので漸化式だけでは数列は定まりません.この漸化式の解は公比3の等比数列なので3の指数関数になっていればよく,
です.このように任意定数が入っています.任意定数というのはでもでもによらない定数であれば解であるということです.
具体的に数列を定めるには初期条件を与えればよく,例えば,と与えれば
を解いて
と決まります(である必要性はありませんが大抵の場合が与えられます).任意定数が入ったような解を一般解と呼びます.任意定数が含まれていることで一般の初期条件に対して例外なく解になっています.ですので漸化式を解くには「漸化式を満たしていてかつ任意定数を含むようなもの」を考えます.
任意定数が含まれていない場合は特殊解と呼ばれます.今の漸化式の場合は特殊解です.特殊解は特定の初期条件のときしか解になれないのでこう呼ばれます.この漸化式の場合,の時のみの解ということです.
次に,漸化式
を考えます.「漸化式を満たしていてかつ任意定数を含むようなもの」を求めたいわけですがひとまず特殊解を考えます.この漸化式の特殊解は
を満たします.ここではの関数ですが,だとしても
となるは存在します.この場合,です.数列としては
という解です.これは初期条件にしか使えない解であることに注意します.(このの一次方程式をチャート式などでは「特性方程式」と呼んでいますがこれを「特性方程式」と呼ぶのは混乱の元だと思います).
次に以下の漸化式を満たすようなを考えます.
これは等比数列なので同様にして一般解が求まります.これはの恒等式です.従って特殊解の等式の両辺に足すことができます.よって
です.ここで,はまさに「漸化式を満たしていてかつ任意定数を含むようなもの」で,元々解きたかった漸化式の一般解になっていることが判ります.よって
と一般解が求まります.
一般に,
についても
を満たす特殊解に
を満たす一般解
を足した
は一般解になっています.ここで注意して欲しいのは,とおけたのはたまたま今の場合,特殊解がの形だからということです.数列を習いたての高校生はいきなりこのが出てきて混乱する人も多いようですが,「を定数だとしてもどうせただの一次方程式が出てくるので必ずそのようなが存在する.だからと置いて構わない」ということです.
よくある「なぜと置いていいのか?」への回答としては,「という特殊解を求める方程式だから」ということになります.
これを更に一般化した
についても(定数,の関数です)
を満たす特殊解に
を満たす一般解
を足した
が一般解として求まります.ですので,この手の漸化式は特殊解を上手く求められれば勝ちです.
では具体的に
を考えます.まず
を満たす特殊解を求めます.もしこれが求まれば
の一般解と合わせて
が成り立つので,が一般解として求まります.
特殊解はの一次式になっていることが形から予測できます.
よって
と置いて
についての恒等式なので整理して
よって
and
から,
なのでなので,
と求まります.
次に
を考えます.例の如く,特殊解は
を満たします.とすると
より
なのでこれが全てのについて成立するには
i.e.,
であればよいので,
で一般解はの一般解との重ね合わせで
です.
今までは二項間漸化式でしたが,次に三項間のものを考えます.
三項間の場合,初期条件は二つなので一般解の任意定数は二つです.
これの特殊解がの二つ見つかったとします.
このとき
,
ですが上の式に,下の式にを掛けて足したもの
も成立します.これをよく見ると,は元の漸化式の解になっていることが判ります.がの定数倍になっていなければ(もしなっていると二つの初期条件から解を決められない),一般解です.
では,そのようなをどう見つけるか.やや天下り的ですが,と置いてみます.すると
でで割って
なので一般解は
と求まります(このについての二次方程式を特製方程式と呼びます.先ほどのについての一次方程式とは明らかに意味が異なります).
この二次方程式が重解になる場合は詳しく書きません(今度追記するかもしれません).
では,目標と言っていた
を考えます.まず特殊解
を考えます.定数だとして見つかりそうなのでと置いて
より
です.
とすると
なのでとして一般解が求まります.
はでより
なので
が元の漸化式の一般解です.
追記:いきなりが出てきて引き算するパターン以外の解説を漁っていたら,数研出版の数研通信によい記事がありました.
数研通信:
記事pdf: