擬ベクトルとパリティ変換
以前,
でウェッジ積を扱いました.基底が
の基底はそれぞれ
です.擬ベクトルとは,このうちで,
に属するものを言います.擬ベクトルの「擬」は擬態の「擬」ですが,これは普通のベクトルとはどう違うのでしょうか.
いま,
という変換(パリティ変換)をかまします.これは同じベクトルを鏡の世界で見るようにする変換です.
この変換でとの変換性を見ると,ベクトルは
と変換します(Einsteinの規約記法を使いました).
他方擬ベクトルは
よって座標軸を鏡の世界のものに替えても不変な奇妙なベクトルが擬ベクトルだと判ります.普通の縦ベクトルの記法で成分表示しているとこの事実には気づきにくいです.
擬ベクトルとしては例えば角運動量があります.実は,ベクトルに対してベクトル積をとるという操作がベクトルから擬ベクトルの写像(ウェッジ積を取った後ホッジ作用素を施す)になっているのです.つまり
です.紛らわしいことが起こるのは3次元空間を採用したことによる偶然で,一般の次元空間で,の元のウェッジ積はの元でこれにホッジ作用素を施すと,なので,その次元は
ででこれが一致するのは偶然の産物だと判ります.
ですので,普通の空間の図に擬ベクトルである角運動量や角速度,磁場を矢印で描きいれるのは本来はNGです.
Wikipediaより,鏡に映した擬ベクトルの画像です.