ウェッジ積を知っていればヤコビアンは忘れてもいい?

体積素を外積(ウェッジ積)で導入します.するとこれらのウェッジ積は2次元ならベクトルのつくる面積(平行四辺形の面積),三次元なら体積(平行六面体の体積)に対応します.これは一般のベクトル

\displaystyle\vec{a}=a^x \vec{e}_x+a^y \vec{e}_y+a^z \vec{e}_zについての話です.ここでは dx,dy.dzを基底にとります.ウェッジ積は以下のように導入します.基底の内積は直交系の場合,異なる基底ベクトルでとると0になったが,外積ではその逆です.つまり
\displaystyle d{x} \wedge d{y} = -d{y} \wedge d{x}
となるように定義します.すると
\displaystyle d{x}\wedge d{x}=0
が従います.これは二次元では面積素片を表すと理解できます.同じ基底ベクトル同士で0になるのは,面積が潰れていることの反映です.また,符号が変わることはヤコビアンに対応します.

簡単な例として2次元極座標を考えます.全微分外積
\displaystyle d{x}\wedge d{y}=d\left(r \cos \theta\right)\wedge d\left(r \sin \theta\right)

\displaystyle=\left(d r \cos \theta- r\sin \theta d\theta\right)\wedge\left(d r \sin\theta+ r \cos \theta d \theta\right)

\displaystyle=r \cos ^2 \theta d{r}\wedge d{\theta}- r \sin ^2 \theta d{\theta}\wedge d{r}
\displaystyle= r d{r}\wedge d{\theta}

次に3次元極座標に関しても,計算はそこそこ面倒(といっても外積の性質で生き残る項は18項のうちの4項)なので省略しますが,
\displaystyle d{V}=d{x}\wedge d{y}\wedge d{z}
\displaystyle=r^2 \sin \theta d{r}\wedge d{\theta }\wedge d{\phi }
つまりヤコビアンというものを全く知らなくても,
座標変換によって体積素片がどう変換するのかが求まってしまいます(もちろん行っている計算は結局は同じです).

 

ウェッジ積の交代性がヤコビアンの正負(空間の向き)を反映しているのが面白いところです.

実は計量テンソルを使えば,

 \displaystyle dV=\sqrt{|\text{diag}(1,1,1)|}dx\wedge dy\wedge dz=dx\wedge dy\wedge dz=\sqrt{|g'|}dx'\wedge dy'\wedge dz'と簡潔に表せます(左辺はDescartes座標系での体積素です).